第8章
売買代金の支払いと登記手続き、
入居後の確認など
売買代金の支払いと登記手続き
物件の瑕疵(隠れたキズ)とアフターサービス等



ある物件の購入意思を固め、その申込みから物件の引渡しを受けるまでにはさまざまな名称で売買代金を支払います。一般的な代金支払いの流れは次の通りとなります。
(1)申込証拠金
その物件を購入したいとする意思表示のための証拠として、または、申込み順位の確保のため、一般的に5万円〜10万円程度を不動産業者に預けることが多いようです。
(2)手付金…売買の本契約締結時
手付金は売買契約を締結する際に、契約当事者の一方から相手方に対して交付される金銭その他の有価物をいいます。手付金は契約が約定どおり履行されるときは、売買代金の一部に充当されます。
(3)内金(中間金)…買主の履行の着手
内金は売買代金の一部弁済金をいい、前払いの性格を持っています。売買代金の全額を一時に支払わず、2回以上に分けて支払う場合の最終残代金以外のもので、内入金とも呼ばれています。買主が売買代金の一部である内金を売主に支払ったときには、買主は契約の履行に着手したことになり、売主は手付金を倍返しして契約解除ができなくなります。
(4)残代金…本物件の引渡し時または融資実行時
売買代金の残金や諸費用を支払って、物件の登記を行います。
残金は売買代金から既に支払っている申込証拠金、手付金、内金を引いた金額になります。残金が融資額より多い場合はその分を現金等にで準備しなければなりません。
また、建物の引渡しから住宅ローンの実行までに期間がある場合は、一時的に銀行などからつなぎ融資を受けることが必要になります。
・住宅ローンの申込み
売買契約締結後すみやかに住宅ローンの申込みを行うことが必要です。各金融機関等の審査のため必要な書類をそろえ提出してください。
・基本的に必要な書類
所得を証明する書類 住民税決定通知書 源泉徴収票など
不動産に関する書類 売買契約書(写) 不動産登記簿謄本 物件説明書など
詳しくはそれぞれの金融機関にご確認ください。
・つなぎ融資
土地の購入代金や建物を建てるときの着手金等を住宅ローンで支払う場合や、融資実行日が決まっていて自由に選択できずに融資実行日前に物件の引渡しを行う場合等は実際の融資実行前に支払いが必要となります。
そこで、銀行から一時的に融資をうけて、時間的なギャップを埋めることがあります。この一時的な借入金のことを「つなぎ融資」といいます。借りている期間の利息、ローン契約の印紙税、手数料などがかかります。
なお、ケースによってはつなぎ融資が不要なケースもありますが、つなぎ融資の必要手数料だけでなく金利等の条件を総合して借入先を選択することが大切です。

新規分譲マンションや建売住宅の場合には、登記の手続きは不動産会社が手配してくれますが、中古物件を購入したり、媒介等で自分の不動産を手放したりする場合には、所有権の移転登記手続きについてもある程度の知識をもっておく方が良いでしょう。
登記が何故必要かといえば、登記は第三者に自分のものだと主張できる対抗要件になっているからです。
例えば、貴方がある土地を購入したとします。ところが売主は同じ土地をAさんにも売っていたとしたらどうなるでしょうか。当然貴方はAさんと土地の所有権の移転を巡って争うことになります。しかし物権変動を第三者であるAさんに認めさせるためには、貴方名義の登記がなければ先に登記したAさんに負けてしまうのです。

(1)表示と権利の登録手続き
建物を新築したり、新築マンションを購入した場合には、その建物の表示の登記と保存登記を行います。当然土地部分は移転登記を行います。中古の物件売買では土地・建物ともに移転登記を行います。表示登記申請の建物の図面は土地家屋調査士に、登記申請は司法書士に依頼します。登記手続きには、オンライン申請と書面申請がありますが、書面申請の場合の所有権の移転登記に必要な書類の概略は次の通りです。
· 登記申請書
· 登記原因証書(普通の場合は売買契約書になります)
· 登記済証(一般的に権利証と呼ばれるものです)または登記識別情報
· 代理権限証書(司法書士への委任状)
· 第三者の許可証(例えば農地法上の許可証などで第三者の許可が必要な場合のみ)
· 売主の印鑑証明書(発行から3ヶ月以内のもの)
· 買主の住民票
· 固定資産税評価証明書(登録免許税の計算に必要です。詳しくは『不動産の取得と保有にかかる税金 登記にかかる登録免許税』を参照してください)
(2)司法書士
表題部とは別用紙に綴られた「甲区」、「乙区」の登記用紙の権利の登記は、甲区は所有権に関する事項、すなわち所有権の保存登記や移転登記を、乙区には所有権以外の権利、例えば抵当権、賃借権等の権利が記載されます。この手続きは司法書士が代行することになります。
(3)売主にローンが残っている場合
売主が中古住宅を売却しようとするとき、その住宅を購入したり、建物を建築するに際してローンを利用し、その債務がまだ残っている場合が多くあります。こうしたケースでは、不動産会社に売主のローンの残高証明を取寄せてもらい、売買代金により抵当権を抹消できるのかを確認する必要があります。仮に売買代金でローンの残債務を完済できない場合は、不動産会社に依頼して、抵当権の抹消について金融機関と打ち合わせておく必要があります。


不動産の売買契約を結んだ売主は契約に定められた通りの完全な物件や権利を買主に給付することを期待されています。それなのに物件に瑕疵(隠れた欠陥)があった場合には、売主は一定の責任を負わなければなりません。「瑕疵」とは「キズ」のことで、ここでいう「隠れた」というのは通常の一般人が世間並みの注意を払ってもその存在が分からない場合をいいます。これを「売主の瑕疵担保責任」といい、民法上、売主は瑕疵担保責任を負わなければなりません。また、特約により瑕疵担保責任についての特約を結ぶこともできますから、契約締結時には必ず確認が必要です

(1)売主の瑕疵担保責任とは
例えば、土台が白アリにおかされていたとか土台が腐っていた、構造上の欠陥で雨漏りがひどい等の状態であったという構造上のものと、購入した土地が将来都市計画道路に指定されており、建物を建築しても取り壊さなくてはならないような法律上の事柄なども瑕疵に該当します。民法では、売主は買主に対し瑕疵担保責任を負わなければならないとしており、買主がその瑕疵を発見してから1年以内は損害賠償の請求や契約の解除ができることになっています。
(2)瑕疵担保責任の特約がある場合
民法に定める売主の瑕疵担保責任は任意規定ですから、特約によって民法の規定と異なる内容とすることができます。例えば、「物件引渡しから2ヵ月間に限り瑕疵担保責任を負う」や「現状有姿による売買であり瑕疵担保責任を負わない」といった特約は有効です。
(3)売主が不動産会社の場合
不動産会社が売主となった場合は、宅地建物取引業法により、不動産会社は瑕疵担保責任に関して、物件の引渡日から2年以上の期間を定めること以外は、民法よりも買主に不利になる特約をしてはならないとされています(不動産会社の大部分は瑕疵担保責任の期間を「2年」と規定している)。例えば、瑕疵担保責任を負う期間を買主が知ったときから1年未満の期間とすることや、契約解除や損害賠償は認めず補修のみを行う、特定の箇所について瑕疵担保責任は負わない等の契約は買主に不利になるので無効とされます。

隠れた瑕疵が民法上の瑕疵担保責任の対象となるかどうかを売主・買主が争っていたのではなかなか問題解決には至りません。そこで不動産業者は自主的に建物の部位別に欠陥部分の補修を約束している場合があります。これがアフターサービスです。
購入した物件に買主が欠陥(瑕疵)を発見して売主に通告しても、売主側がその欠陥を通常予想される商品の状態を逸脱した欠陥だと承諾しなければ、結局裁判で争うしかなく、時間とお金がかかるほか、欠陥に対する迅速な対応がとれません。
そこで、売主が営業ツール又は消費者サービスの一環として自主的に欠陥部分の補修を無償で行うものがアフターサービスであり、売主が約束した部位別のサービス期間内については、買主の使用責任や経年変化等を除いて、欠陥部分を迅速に補修する業者の自主的サービスです。

1)アフターサービスの内容について
不動産業団体に加盟する大部分の不動産会社は、売買契約に際し、アフターサービス基準を設定しています。従って売主は当然その範囲の債務を負うことになりますが、その範囲はあくまで補修に限定されるものです。ですから、アフターサービスの内容等については十分に確認しておくことが大切です。
(2)不動産会社はアフターサービスで瑕疵担保責任は免れるか
不動産会社はアフターサービスとしての補修を行うことで、法定責任としての瑕疵担保責任を免れるわけではありません。しかし、一般的には欠陥部分の補修を迅速に行うことにより、その責任のほとんどは事実上果たされるものと考えられています。

平成12年4月より「住宅の品質確保の促進等に関する法律」が施行されました。この法律は住宅の品質確保の促進と消費者が安心して住宅を取得できる市場条件、住宅にかかる紛争の処理体制を図ることを目的にしています。
この法律により新築住宅には10年間の瑕疵担保責任が義務づけられるとともに「住宅性能表示制度」とトラブル発生時に迅速な問題解決を図るための「指定住宅紛争処理機関」が創設されています。

(1)10年間の瑕疵担保責任
新築住宅の基本構造部分については、建設会社に10年間の瑕疵担保責任が発生します。10年より短い期間が契約で設定された場合は無効になり、短縮することは認められません。10年を超える瑕疵担保責任の期間は最長20年まで延長することが認められています。
ただし、この瑕疵担保責任はあくまで基本構造部分についてのみでありそれ以外の部分には認められません。基本構造部分とは「構造耐力上主要な部分」(基礎、柱、床等)と「雨水の侵入を防止する部分」(屋根、外壁、サッシ等)を言います。
また、新築住宅とは工事完了の日から1年未満のもので、まだ人が住んだことのないものが条件であり、一度でも人が住んだ場合や人が住んでいなくても工事完了後1年を過ぎてしまうと新築住宅にはあたりません。
(2)住宅性能表示制度
省エネルギー性能や耐震性能等は外見だけでは判断できません。そこで住宅の性能がどの程度のものなのか客観的に第三者が判断できるようにした制度が住宅性能表示制度です。この制度は任意の制度ですから評価を受けるか否かは自由です。この制度のメリットは次の通りです。
· 住宅の性能を設計・施工段階で第三者がチェックするので安心できる。
· どのような性能をもった住宅なのか判断でき、その性能をもった住宅の引渡しが約束される。
· トラブル発生時には迅速な問題解決を図る紛争処理支援センターが利用できる。
· 公庫の手続きが簡素化される。
· 中古住宅として売却するときスムーズになりやすい。
ただし、評価や検査のための費用は自分で負担することになります。
(3)紛争処理
住宅性能表示制度を活用した住宅にトラブルが発生した場合、指定住宅紛争処理機関に申請することにより問題をスピーディに解決することができるようになります。裁判で争うより簡単かつ少ない費用で利用することができます。
(4)住宅瑕疵担保責任保険
新築住宅の売主等(建設業者・宅建業者)が、国土交通大臣の指定する「住宅瑕疵担保責任保険法人」との間で契約を締結し、その住宅に瑕疵が判明した場合、補修費用等が保険金によりてん補される制度です。また、売主等が倒産して補修が行えない場合等は、発注者や買主が保険法人に瑕疵の補修等にかかる費用(保険金)を直接請求することができます。